先にイギリスCornwallで2年ぶりに先進国G7会議が開催された。日本以外のG6主要国にとっては、ワクチン接種が進むにつれ集団免疫を獲得できたとして、今度は途上国に向けて10億回分のワクチンを供給するという首脳宣言で閉じた。コロナ対応に限らず最近の中国の諸々の動きを牽制したG7としての戦略提示が目的の会議であったが、私には日本の菅首相の姿が実際以上に小さく見えたサミット会議であった。
何故ならば、ワクチン接種拡大という世界のコロナの(対応というより)戦略に巻き込まれることなく、日本は独自の“感染予防と経済・社会活動の両立”を1年前から実行できる感染状況にあったにも拘わらず、そのチャンスを完全に逸してしまったことが残念でならなかったのではないだろうか。(菅首相に最大級の好意をもって推察するが心中は不明だ)。
COVID-19発生以来世界は覇権を争う米・中を中心に、国家安全保障ニーズにマッチした先端バイオ技術を駆使したワクチンのスピード開発を目指したわけだが、これは欧米では「コロナ対応と経済活動復興も睨んだ国家戦略一本化」していることを我々は理解することがポイントである。そこで先般のG7報道記事やNet公開されているコロナに関連する累計データを横に並べて俯瞰すれば、欧米追従型の日本のコロナ対応の結果、もはや取り返しがつかない経済状態に日本が陥っていることが明確に浮かび上がってくる。
(1)G7各国のコロナ戦略とGDP成長率
| G7各国のコロナ概況(G7報道記事ほか最新Net情報) |
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(A) |
(B) |
(C)=経済予測(IMF) |
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人口100万人当り
コロナ死亡者数 |
ワクチン接種率
(%) |
GDP予測成長率(%)
2020➡21➡22 |
| イタリア |
2,101 |
49.0 |
🔺8.9→4.2→3.6 |
| 英国 |
1,886 |
64.1 |
(IMFデータで不明) |
| アメリカ |
1,812 |
52.1 |
🔺3.5→6.4→3.5 |
| フランス |
1,695 |
45.0 |
🔺8.2→5.8→4.2 |
| ドイツ |
1,074 |
48.0 |
🔺4.9→3.6→3.8 |
| カナダ |
687 |
65.1 |
▲5.4→5.0→4.7 |
| G6単純平均 |
(1,543) |
(53.9) |
(6.2→5.0→4.0) |
| 日本 |
111 |
14.6 |
▲4.8→3.3→5.1 |
| 中国(参考) |
3 |
43.2 |
+2.3→8.4→5.6 |
(Ⅰ).(A)・(B)比較
まず今回G7でも話題の中心となったワクチン接種率(B)だが、私は日本が14.6%と先進国平均(53.9%)に大きく後れを取っていること自体を特段問題にしない。
何故ならば、各国が目指す“国益重視のリスク管理”の最終目的である(A)すなわち“人口100万人当りの
累計コロナ死亡者数”の極少化という観点でいえば、日本は欧米G6諸国平均の約1/14(=1,543÷111)の被害という“コロナ・難感染国家”をこの一年半継続的に維持し続けているからである。
コロナ禍のリスク管理上の目的数字としては、日本のコロナ対応はG7中No1、これでG7のど真ん中に座れる。ところが菅首相がまぎれもないこの事実について胸を張って言えないのは、なぜ日本が難・感染国だという科学的確信とその政策反映ができないまま、専門部会が推薦する“感染症的アプローチ”(=緊急事態宣言+自粛の繰り返し策)を忠実?に追求したからである。私は専門部会が感染症学的根拠に基づいて(その範囲内において)正しい提言をしたと思う。
しかし一国のトップたるものは、あらゆる異なる専門家の意見に耳を傾けて得た“総合知”をもって、自らの責任と引き換えにコロナ方針を打ち出し国民を導くものである。特に感染症学的アプローチと真逆の免疫学的アプローチ(=感染予防と経済・社会活動の両立。自粛をしない)に対してほとんど耳を貸さなかった結果こんな事態になった。社会生活復興もままならない国民から観ればまさに“自粛禍”即ち国のコロナ対応の過ちは人災である。
『ワクチン接種率最低(14.6%)の日本が、G6の1/14のコロナ死亡者数を維持し続けている』という事実が何を物語っているのか?私は日本人固有に持っている“集団免疫・歴史的な社会免疫・抗体”等の検証をすることで、“難・感染国日本”の科学的な裏付けを得られるものと確信している。それは東京オリンピック開催を根拠づける大きなものにもなるのではないだろうか。今からでも遅くはない。勇気をもって「日本におけるCOVID-19の感染自体とその背景」について国民に丁寧に説明をすべきである。
そのうえで、一刻も早く“感染予防と経済・社会活動の両立”に舵を切ってほしい。
(Ⅱ).(A)・(C)比較
結論から言えば、
『人口比でコロナ被害が一番少ない日本のコロナ対応が自粛を繰り返している間に、コロナ被害が14倍も大きい欧米G6諸国のワクチン戦略によって、向う3か年のアフターコロナ経済復興(=GDP成長率%)がG7中最低と予見されている』といえる。
この予測は、自然免疫でコロナ対応できていた日本人が自粛を繰り返せば経済復興が遅れるのは自明の理である。すなわち“感染予防と経済活動の両立”が去年の今頃の1年前から出来ていたにも拘わらず、専門部会(=感染症学的アプローチである自粛の一点張り)の提言に従った政府のコロナ対応が間違っていたからに他ならない。
読者各位には上表(C)に時間経緯(例えば1年後)を加えて(A)・(B)・(C)を比較検証していただきたい。オリンピック開催効果なども予測されるが、私の解説と大きな差異は生じていないはずである。それほど日本のコロナ対応は大失敗であったと断じる。
(Ⅲ).まとめ
本項のテーマに関わる纏めとして、私の推論と提言を簡述する。
・感染症学的アプローチに基づく対応としてのウイルス排他的な自粛の繰り返しは、“リスク最適化の原則”(=リスク管理が生み出す別のリスクに十分配慮する原則)に反することで、GDPの減少を食い止められない。一連のコロナ対応の中で自粛を繰り返すことは、思考停止に陥った失敗と言える。
・ウイルス感染を食い止める手段としては、“集団免疫の獲得”しかないことを理解すべきである。(なおウイルスの不活性化を待つには代償(コロナ死亡者数の増加)が大き過ぎることが明らかである)。
・集団免疫の獲得には、ワクチン接種拡大と自然免疫で対応するという2通りしかない。
・ワクチン接種戦略は、欧米の“易感染国”で採られるが、開発スピードが問われる中でバイオ技術先端国の遺伝子組み換え技術を応用したmRNA型ワクチンがそのニーズに合ったといえる。リスクを承知で早く使えるというベネフィットが優先されてG7会議宣言で、その成果が強調された。将来リスクがあることは、決して拭い去られたとは言い切れない。
・要は欧米は官民共同でコロナ対応としてのワクチン戦略を(コロナ死亡者数の急増を覚悟して)当初から着々と実行していたと言える。
・もう一つの免疫学的アプローチでウイルス親和的な“感染予防と経済活動の両立”を目指して集団免疫を獲得する方法は、日本も含む東アジア諸国の“コロナ・難感染国”で採り得る戦略であった。しかし6月に開催されたG7で完全にその可能性は消滅したといってよい。日本は自然免疫対応とワクチン接種対応の混合型と評価出来るが、GDP成長が世界で最低という点では日本のコロナ対応は失敗だったといえる。
・免疫学的アプローチによる“感染防止と経済活動の両立”が出来たと思えば残念でならない。
・コロナ対応に限って言えば、日本のG7における存在意義が完全に無くなったということであるが、①と②をまとめて③「ミネルバの梟」でその背景や原因について詳細に述べることにする。