第05回チョイ住み in Paris

P1000401人は何故旅に出る
標題は最近観たNHK-BS放送の番組名であるが、それは「市民と同じ感覚でその街に住んでみる」という誰もが一度は経験したいことをテーマにしたレポート番組で、40日間がチョイかどうかは別にして、事前に観てからパリに行ったらよかったなと思う部分が多々あった。パリ市内やフランス各地のレポートをしていく前に、今回は40日間の生活基地としてパリのアパートに滞在した動機について先ず お話したい。
そもそも旅は出発前にプランをあれこれ考えている時が詰まる所一番愉しい時間ではなかろうか。今回のように40日全ての旅程を自前でプランを立てて旅する場合は、実際に現地に着いた途端に、日本では想定できなかった出来事に多発テロの如くあちこちで見舞われる。その対応に追われていたら、日本で予め立てたプラン通りに行くことの方が寧ろ少ないと覚悟しておかなければならない。これが添乗員付きのパックツアーだったら、体調管理ばかりは個人の責任であるが、旅先での予想外のアクシデントには殆ど見舞われることなく、添乗員によって快適に目的(観る・食べる・遊ぶの所謂“るるぶ”)が遂行されていくわけである。初めての海外旅行なら、当然パックツアーに参加するのがいい。
ところで人間が旅に出たくなる衝撃に襲われるのは、日常性から抜け出して予期せぬ出来事との遭遇を望むからではないだろうか。これは旅に限らず、人間の脳自体が「偶有性(contingency)」を好むようにできていることと大いに関係があるらしいのである。つまり「脳は決まりきった世界(日常性)は嫌い」なのである。確かに僕自身の人生を振り返ってみても、この大脳原理に即した行動が小さい時から目立った。例えば路面電車で通学をしていた小学生の頃は家に真っ直ぐ帰らないで、電車を途中下車してわざわざ遠回りしては未知との遭遇を探検家気分で楽しむ癖(プチ放浪癖)が人より強かったようである。時に寄り道の度が過ぎて母から大目玉を喰った。塾もなかったし小児誘拐が頻発するような時代背景ではなかったが、寄り道が好きな小学生は家族にも随分心配をかけたことだろう。(大人になっても真っ直ぐ帰宅しないで毎晩一杯引っかけたくなる習性として残っているが、それを脳の偶有性を好む欲望のせいにするのは、単なる酒飲みの自己弁護に過ぎない)。

アパートをチョイスした二つの理由
要するに、歳を重ねて物事の記憶力たるやどんどん薄れていって困っている反面、僕の脳の「偶有性の探求意欲」に関しては、強まることがあっても決して衰えることを知らないようである。退職後の「時間持ち状態」も加勢して、今回の40日間のパリ滞在と相成ったわけである。住まいも過去の国内外の旅行で日常化しているホテル滞在形式を取らないで、20日間ずつ2ヶ所(計40日間)の炊事・家具付き1人住まいアパルトマンを迷わず選んだ。ただし、脳の欲望に従ってパリッ子と同じ感覚で裏町通りを独りで探検してみたくとも、血圧/糖尿/高脂血症治療薬を常用しなければならないうえに、足首靭帯にも古傷を抱える66歳の身体には無理が利かない現実を自らがよく弁えるように、一族郎党から言い聞かされた。納得である。ところが日頃日本では、近所に出かけるにも車を使って自分で歩くことが殆どなかった僕に、今回の旅から帰国したあとに思わぬプレゼントがあったのである。それはパリで沢山歩いたお蔭なのだろう、何と履いていったズボンのベルトの穴が2つも細くなって帰国したのである。如何に日頃の生活が肥満を助長しているかよく分かった。詰まる所、僕の大脳本能は大満足、同時に減量も出来て、いいことずくめの「パリのチョイ住み」であった。
ところで必要に迫られてパリでアパート独り住まいを選択したことにも少し触れておきたい。それは年金暮らし者の経済的事情である。つまりパリのホテルに40日間も滞在することは、若い時から老後の為にコツコツ貯金をしてきたわけでもない僕にとっては本来不可能なことである。その代り年金暮らしは「時間持ち」という特権がある。40日間も日本を不在にできるわけだから、ここは安く・長く(economical & longterm)パリに留まることを第一に考えた。つまり世界の都市の中でも、パリのホテルは特に高い。しかも、散歩と芸術鑑賞には格好のルーブル美術館~オペラ座界隈は、世界でも超高級ホテルが立ち並ぶゾーンである。パリ1区、ヴァンドーム広場に面する有名ホテルの項目をWikipediaで読んで分かったことだが、僕の40日間アパート滞在総費用では、件のホテルに2泊しかできないないと例えれば、庶民には分かり易いのではなかろうか。それでも僕の部屋とて、ベッド・キッチン・シャワー浴室・椅子テーブルが約15㎡に詰まっているので、独りで睡眠と自炊食事を摂るには十分な空間であった。スーツケースを横に置いたらもう足の踏み場が無くなるほどだったが、日中は殆どパリ市内の散歩外出、SNCF(フランス国有鉄道)で近郊都市の散策、あとはTGVを使ってフランス国内主要都市(8ヶ所)の日帰り旅行をしていたら、あっという間に40日間が過ぎてしまった。パリのアパートを基地にして地方都市に日帰り旅行をするには、早朝6時前後に出発して深夜(0時を過ぎることもある)に帰宅するというスケジュールなので、そんな日は自炊が出来ない。駅のスナックスタンドや、マクドナルド、ケンタッキー等で夕食を済ました。また話のネタにと思ってニースからの帰路でTGVのビュッフェを1度だけ使ったが、外国独り旅の車内で離れた車両に行って食べるのは、大変落ち着かないものであった。(僕のユーレイル・フランス国内フリーパスには、TGVの車内ブッフェで食事が無料でできるという英語記載のバウチャーが1枚付いていたが、僕のフラン語会話力では結局使いきることが出来なかった。使うに当たって色々な制約があるようである)。結局800円程度で、サンドウィッチ+コヒーセットにありつけたが、自炊の夕食の方が断然美味しくて、安上がり、栄養豊富だった。
これからは1回当たりの投稿を短くしたとしても、40日間のレポートは相当ロングランになるだろうけれど、この「ソフィアの昼休み・仏蘭西40日間放浪記」ブログに、パリの街角散歩やフランスの各地方都市日帰り旅行の想い出を、僕が撮った“るるぶ”の写真も交えて日程順に書き込んでいきたい。

(写真は、最初のアパートから歩いて5分と掛からないところにあるアーケード街で、Passageパッサージュ・ショワソルという。何回か散歩に出掛けてコーヒーを飲んだが、パリ市民が往来するのを眺めては、「あー僕は今パリに暮らしているのだ」という実感が湧いてくる場所の一つである)。

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