第06回 酒都ボルドー

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はじめに
今回から40日間仏蘭西放浪して訪ねた街々を具体的に紹介していきたい…と言っても、ある新手を考えた。言葉にならない感動を受けた時に「筆舌に尽くし難い」とはよく言ったもので、各地の感動を下手に拙文で紹介するより、今回旅先で撮った写真をブログで紹介することで、その街の雰囲気を先ず感じ取ってもらおうというわけである。他でも述べたが、そもそも今回の旅は“るるぶ”の目的で各地を歩き回るよりも、寧ろ独りで“茫洋とした想い”に浸りたい旅であるから、40日間に訪問した先々でぼんやりと想ったことを書き尽くすことは端から諦めている。それにしても旅先で感じたり、想ったことを簡潔に詩句やスケッチに込めて残している人を実に羨ましく思う。僕は写真と、ぼんやり想いを適量だけボツボツ綴っていくことにする。

ボルドー vs ブルゴーニュ
“ボルドー”の名前を聞いただけでワインの香りが漂ってくる”…と書き始めたところで小首を傾げて読んでいる人は、ちょっとしたワイン通だと言えるだろう。なぜなら沢山あるワインの品評項目の中でも「香り」と言うことに絞って数多のワインを飲み比べたら、やはりボルドーを抑えてブルゴーニュ(英:burgaundy)に軍配が上がるのではなかろうか。以下は主に赤ワインについて言えることであるが、ボルドーの香りが、重厚且つ芳醇で心をぐっと落ち着かせるものがあるのに対して、ブルゴーニュのそれは、華やかな香りを発散してどこか心も躍りだすようで何かサッパリとしている。(個人的な感覚なので人によって表現が違ってくるのは当然であるが)。
従って鮮紅色のブルゴーニュワインは香りが踊り出し易いように、空気に触れる水面が広い大きな球形グラスに先ず注ぎ、次にぐるぐると鼻先で廻して広がる香りを撒き散らして楽しむ。グラスはワインが醸し出す香りに従った理にかなった選定がなされている。
一方ボルドーワインには細身の縦長のグラスを用いる。先ず濃い暗紫赤色の濃厚な色を鑑賞する。次に華やかに発散するというより内向きに香る葡萄の芳醇な匂いを、煙突の如きグラスから深く吸い込んでから口に含む。心安らぐ瞬間である。
勿論ワインは香りで終わらない。口に含んで五臓六腑に沁み込む時に感じる肝心の「味」はといえば、
『渋み・芳醇・安らぎのボルドー。酸味・華美・躍動のブルゴーニュ』と両者に好対照なものを僕は感じる。
そう、ワインは男女の愛の脇役にも良く使われるから喩えて言えば、僕には中高年男性が女性に求めるものをボルドーは全て有していると最近思えてならない。ボルドーの方がブルゴーニュよりも心を落ち着かせてくれる。所謂、人生経験を色々経てたどり着いた熟女を僕は感じる。心を躍らせるブルゴーニュの華麗さは“青春~白秋年代”にはピタリ来るものがあったかも知れないが、67歳の僕には少し物足りなくなったのかもしれない。
以上ワインについて言えることは、他人様の評価を沢山読み・聴きすることよりも、自分で実際に飲んで味わったその時の感覚を一番大切にすべきで、それがそのワインの持っている真実だといえる。
実は43歳の時に、パリから各駅停車に乗ってディジョンに行った時に街角で飲んだ安いブルゴーニュワインの味が忘れられないでいる。何しろ当時の僕の心を躍らせる華やかさがあった。それに引き替え23年後の今回はボルドー・メドック地区の二か所で試飲するだけのバスツアーであったが、実際にメドックのブドウ畑の空気を吸ったり、シャトー内の貯蔵樽に触れたりするだけで、ワインが持っている特徴を雰囲気で感じることが出来た。茫洋とぼんやり想いに浸りながら考えた。人間もワインのように年相応に熟成できたらいいな。出来たらボルドーで一泊して、66歳好みのご当地ワインを飲みたかったのだが今回は仕方ない。今度は幾つで再訪できるだろう。その時は迷わずボルドーワインの持つ重厚さに期待を寄せてボルドーに必ず1泊するであろう。

写真について
酒都ボルドーにはパリ・モンパルナス駅からTGVで南西方向に3時間半、そして駅前から市電トラム乗換えて10分程度でガロンヌ川沿いに広がる街の中心部にある“Tourism Office前”に着く。ボルドー市観光局が主催する土曜日のバスツァーは、メドック巡りと決められていた。
左上:“いかり肩”の大きなイミテーションボトルが真ん中に置かれていたボルドー・メドック地区(in medio aqua:ラテン語で“水の真ん中”つまり大西洋ビスケー湾とジロンド河の中間に位置する一大葡萄畑地帯で世界的な赤ワインの産地)のワイナリーの庭園である。書物に拠れば、側面が直線で瓶口に向けてのくびれが大きいいかり肩のボルドーワインの方が、ブルゴーニュのなで肩ボトルより、ワインの澱が止まり易くてグラスに注ぎやすいという。
右上:メドックを走るバスの車窓からシャッターを切った。このようなシャトー(ブルゴーニュのドメーヌに相当するワイナリー)を囲む広大な葡萄畑が次から次に現れる。空の青とブドウ畑の深緑が上下を二分する。葡萄の木は背が低いので、農家で房を収獲するのは中々の重労働らしい。
左下:街の目の前を流れるガロンヌ川岸と市電が走る車道路と庁舎群の間に広がるプール(と言っても深さ10cm程度の水浴び散歩が出来る一種の人工池)があるブルス広場。ボルドーの顔と言われている。市民が愉しそうに戯れていた。ボルドーはワインで得た豊かな財源で豊かな美しい街づくりを目指している。夜景も見事だと聞く。
右下:教会はじめ古い建造物も大切に残してある。凱旋門は、ガロンヌ川がボルドーの街で大きく三日月の如く湾曲する所謂“月の港ボルドー”を向いて建っている。古代のローマ時代から月の港から大西洋岸のビスケー湾を経て世界に向けて積み出されていったことだろう。
メドックバスツアーの試飲では、熟年女性が持っていそうなボルドーワインの魅力の一端しか味わえなかった。加えて日没が遅い9月半ばの19:30分発パリ行きのTGVでは、月の港ボルドーの夜景撮影もできなかったことも心残りである。今度は必ず1泊しよう。(もう来れないかな)。それでも、滞在中に近所のカルフールで買ってきてよく飲んだボルドーワイン(€7~8の大衆ワイン)であるが、今回の旅(パリからTGVで8箇所を訪ねた中で一番最初の旅がボルドーであった)の後は、滞在中はもとより帰国後もいかり肩のボトルを眺めては楽しかった旅を思い出して飲むようになったのである。

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